武川建築設計事務所

インドの建築家バルクリシュナ・ドーシの建築

2018.03.09更新

2018年のプリツカー賞にインドの建築家、バルクリシュナ・ドーシ氏(Balkrishna  Doshi)が選ばれました。
建築界のノーベル賞ともいわれる賞ですが、小さく設計事務所をやっている私にとってはあまりに遠い世界なので深く興味を持つことがありませんでした。ただ、今回の受賞は心に引っかかるものがあったので記録しておきます。

ニューデリー市内 (New Delhi, India)

今から十数年前、建築の世界に飛び込んだ学生の頃に名建築を見て回ろうとインドへ旅に出ました。近代建築を切り開いたコルビジェや独自の世界観で強い精神性を持ったカーンの建築を肌で感じたいと、友人2人と1月ほどかけてインドからバングラディッシュまで周る旅です。

その旅の途中でドーシ氏の作品と出会いました。事前の下調べでその名前を知った程度の知識だったのですが、それまで見てきたコルビジェやカーンの建築と同じく、厳しいインドの気候から穏やかでおおらかに守られる感覚や、風土に染まる佇まいを体験し、大きな衝撃を受けたことを覚えています。

アーメダバード クジャラートの劇場(Ahmedabad, Premabhai Hall for Gujarat Vidyasabha)

アーメダバード フセイン-ドーシ グファアートギャラリー(Ahmedabad, Husain-Doshi Gufa Art Gallery)

アーメダバード CEPT大学 建築学科棟 (Ahmedabad, ACEPT University)

そのドーシ氏によって設計されたアーメダバードのCEPT大学を訪れたときのことですが、講義終わりだったのか偶然にも校門前で車に乗り込もうとされている本人をみかけましたので、勢いに任せて話しかけて見ると、立ち止まってしばらく相手をしていただけました。笑顔こそありませんでしたが、その穏やかで丁寧な語り方はとても印象的でした。旅の恥はかき捨て、とばかりにドーシ氏のアトリエである「サンガト」を見させていただけないかとお願いしたところ、「連絡しとくから、どうぞ。」とのこと。その足で訪れたサンガトもまた、カラカラに乾いた砂地と厳しい日差しの中に突如現れるオアシスのような居心地の良い空間で、更にはスタッフの方に内部の案内までしていただき、とても貴重な体験をさせていただきました。

アーメダバード サンガト(Ahmedabad, Sangath)

インドでの建築体験は、今でも鮮明に思い出せるほど強烈なものでした。環境の過酷さが、建築が人を守るためのシェルターであることを強く認識させてくれます。日本とは気候や風土は全く違う土地なのですが、偉大な建築家たちが生み出してきた人に安心感を与えるおおらかな空間を私も作って行けたらと思います。

今回の受賞のニュースを見て、当時一緒に旅をした仲間の一人からも連絡がきました。私と同じように当時の記憶が思い出されたんだと思います。もうどこにしまったかも忘れていますが、久々にその時の写真や動画を引っ張り出して見直してみたくなりました。

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