武川建築設計事務所

大人の夏休み自由工作

2025.08.07更新

 

息子が夏休みの工作を頑張っているので、大人も頑張りました。

今回チャレンジしたのはジャコメッティの『喉を切られた女性』(Alberto Giacometti :Woman with Her Throat Cut)です。ニューヨークのグッゲンハイム美術館が所蔵している作品です。

追記:MOMAにある方が今回の色合いに近いですね。

これまでの遮光器土偶、縄文火焔土器につづいて3作目です。そろそろ作るのも慣れてきたところですが、今回は残念ながら3Dデータが公開されておらず、そこまでメジャーな作品でもないため一般のサイトにも参考になるデータがありません。自分で作るには有機的な造形過ぎてよっぽど得意な人でないと難しそうです。

というわけで最新テクノロジーに頼ることにします。海外のサイトですが、2Dの画像から3D形状を推測してモデルデータを作成してくれるサイトで立体化を試みます。同様のサイトはいくつかありますが、今のところここが無料という条件の中では一番精度が高かったです。

Hitem3D

元となる画像データはできるだけ全体像が確認できて解像度が高いものをググって探します。そのデータをアップロードすると5分もかからず立体化してくれます。ただし結構誤解しているところもあるので何度か試して後の加工で何とかなりそうなパターンを選択。3Dプリンターで扱いやすいstl形式で保存します。

これがよさそうですが、よく見ると羽?みたいなパーツがお尻から生えてたり、水かき?のようなパーツが両手から生えたりしてます。この辺は切った貼ったで調整できそう。

次は3Dプリンター出力用のスライサーと呼ばれるソフトで出力準備します。

不安定な形状なのでサポートと呼ばれる支え部材がみっしり付きます。出力時間は10時間ほどでした。長っ、と思うかもしれませんが寝てる間にやってくれるので出力までの作業時間は賞味10分。

バキバキとサポート材を取り外してパーツを取り出します。

次は形状を修正していきます。余分な部品をカットしたり、ない部分をパテで造形したり。実物の画像を見ながら調整します。

 

この部分のふくらみに納得がいかなかったので再造形。ここ重要。

顔?の部分はうまく表現されていなかったのでゼロから作成。

おおむね終わったらいったんサフを吹き付け。塗料を乗りやすくするのと、パテを持った部分の凹凸が見えやすくする目的です。再度やすり掛けで微調整。そして最終塗装です。

塗料はブロンズっぽく仕上げたかったのでターナーのアイアンペイントをベースに、黒、こげ茶を混ぜながらムラっぽく仕上げてみました。

腕?のジョイント部分も元作品に忠実に再現。極小ヒートンを2つ使って可動するようにしています。完成したレプリカがこちら。

 

台座にはジャコメッティが生まれたスイスの片麻岩を使おうと思っていましたが、石の主張の強さに負けてしまったので直置きにします。

毎度思うのですが、作家が何を考えてこの造形にしたのかをいろいろと夢想しながら作るのはとても楽しい時間ですね。

うねうねしていますが遠目で眺めると足と手、胴体、首、顔があるように見えるので人間を表現している。女性的な特徴も備えている。仰向けになって横たわっているが、おなかが湾曲していて悶えているようにも見える。手足の先はなぜかひれのような形状になっていて、地面を歩くには不自由この上ない。片方のひれの先はとがっていて、人を寄せ付けない拒絶を感じる。もしかするとこの作品は女性が社会から受ける抑圧、しがらみみたいなものを表現していて、それに弱弱しくも抗う姿を示しているのではないか、などと考えたりもしました。

テクノロジーのおかげでこんなに手軽に造形を楽しむことができます。面白い世の中になりましたね。

 

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