武川建築設計事務所

工務店訪問

2023.12.18更新

少し時間が経ってしまいましたが、11月の終わりに弘栄工務店さんにお邪魔してきましたのでその記録です。

弘栄工務店さんは岐阜県可児市を中心に木造住宅はもとより商店建築から寺社仏閣まで手掛けられている工務店です。私の地元からもそれほど遠くない為一度伺ってみたいと以前から思ってましたが、たまたま縁があって下呂市の現場帰りに急遽立ち寄らせてもらえることになりました。急な訪問のお願いだったのですが、なんと社長自らババババっと予定を組んでくださり作業場からモデルハウスや施工現場、そして先代社長の自宅まで見させてもらうフルコースを設定していただきました。お忙しい中感謝です。

先代が下呂市で会社を興されたので本社は下呂市のこの作業場となっているとのこと。最近珍しいのですが造作家具も自社大工さんによって造られています。いつも思うんですが、作業場は何とも言えないわくわく感がありますね。わくわくするといつも膝の関節が痛くなるのですが、今回もみしみし言ってました。この感覚に共感される方いますでしょうか・・。

こちらは可児市にある「CO-A village」です。不思議な形をした外観ですが、この家形そのまま木架構の門型フレームが連続していて、4つのボリュームの大空間を作っています。大断面梁を使わず4寸角のみで構成されているからか、美しいけど威張らないとても優しい木質空間だと感じました。自社グループで運営されているcafeのランチをいただきましたがとてもおいしかったです。ほかにもお洒落なネイルサロンや古着屋さんがテナントとして入っていて、この建物をうまく利用する運営の仕方もあってこの心地よい雰囲気を作っているのだと思います。

CO-A villageの奥には「CO-A DIY FACTORY」があります。ここがまたわくわくする場所で、あこがれのmakita製電動工具やノミ、カンナ、金槌木槌、クランプなど工具一式と木材、塗料まで何でもそろっているなんとも素敵な作業場なんですが、時間貸しで使わせていただけるとのこと。これは膝が震えます。地域の方向けの工作イベントも行われているようで、うちの子もぜひとも連れてきたい!と思わせてくれる場所です。

この壁一面の棚、DIYっぽく荒い表現で造られた棚ですが、よく見るとビス跡がない・・。さりげなく手の込んだ仕事です。なんと20代の大工がこの現場の棟梁をしたとのことで、それほどの若手にこの難解な現場を任せられる大工の層の厚さを感じずにはいられません。社会問題になっている途切れ気味な職人の技術継承もうまくいっているのでしょう。

モデルハウスも一通り見させていただきました。どの棟も直感的に素敵な生活を想起させてくれる提案が随所にあって、なるほどなーとうなってばかりでした。当然ながら水回り、生活動線も豊かに設計されて納得のモデルハウスです。いろいろな用途の建物を見させていただきましたが、どの建物も伝統的な設えや習慣にとらわれすぎず感覚的な心地よさみたいなものから空間を組み立てられていて、演出的な部分もあるのですがそれが俗っぽくならない絶妙なセンスでまとめられている、そんな感想を持ちました。建物の設計から配置する小物に至るまで社長と奥様が全般的に指揮をとられているということで、すべての建物に一気通貫した思想が込められていてその積み重ねが弘栄工務店の独自の色を作っているのだなと思います。

これまでいろんな工務店の経営者の皆さんとお話しする機会がありましたが、経営者が強い思想を持っていて、それが社員や創り出すものに深く浸透している会社ほど世間に一目置かれるようになっている気がします。会社が大きくなるほどそれが難しくなるのだと思いますが、弘栄工務店さんほどの規模でそれができるのはなかなかすごいことだと感じます。会社経営のことはこれっぽっちも分からないのですが、最近は工務店の経営の深さを知るにつれ俄然興味がわいてきました。

先代社長の自宅も拝見させていただきましたが、武家屋敷のような清々しく洗練されたこれまた立派な佇まいでした。玄関の敷居をまたぐと内部は空気がキリっと引き締まる感じがします。設えの良い空間は空気が違ってみえます。先代は元々大工で、棟梁として腕を磨き、廻りの大工仲間とともに会社を立ち上げたとのこと。修業時代を苦労をたくさん聞かせていただきました。「大工の腕前を発揮できるいい設計をしとくれんか」と背筋の伸びる薫陶もいただきました。頑張ります!

大工の腕で会社を興した先代と、それを現代的なセンスを合わせて継承した現社長。今後の展開がとても楽しみです。貴重な機会をありがとうございました。

 

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