百合ヶ丘の改修
若い夫婦二人のためのマンション改修計画。
購入したマンションはいわゆる「リフォーム済み」の物件で、壁・天井はビニールクロス、床は木目調ビニールシートで仕上げられたピカピカの状態でした。夫婦ともに建築関係の仕事をしていることもあり、空間について敏感な二人はしばらくここで生活してみたものの、様々な問題に気が付きます。手足に直接触れる素材の質感に対する疑問や、東西の窓が個室の壁に塞がれ、空気の流れが遮られた状況から発生する結露。何より経済性を根拠に作られた「間取り」や新建材に耐えられない違和感を覚えていました。
依頼を受けた際に伺った予算は、安価な建材を使わず希望する空間を実現していくには厳しくはありました。設計する際には、出来る限りの簡素化、効率化を検討し、何度も施工側と交渉しながら計画を進めました。プランは個室を作らず、新たに設置する3 枚の壁で空間を緩やかに切り分けています。建具(ドア等)の数も減らせるため、費用はぐっと抑えられました。
狭かった玄関前の空間もタイル貼りの土間が北側窓まで続く開放感のある場所となました。正面の廊下は本や小物を沢山持つ夫婦の個性を表す場所となり、来客を迎える楽しいアプローチとなっています。
結露が頻繁に起きていた北側の壁は、東西に長いこの物件の特性を活かし、手持ちの絵や写真を飾れる長い壁面を造っています。東側の窓を開けると、遮るもののないこの壁に沿って良い風が流れてきます。
壁や天井の仕上げは、薄塗りではありますが漆喰で仕上げています。床の杉無垢材と合わせて、調湿、消臭の効果は体感できるほど向上しています。杉はあえて塗装をせず、杉本来の香りや質感を感じられるようにしており、時間が立つにつれ飴色に変化し、傷や汚れなども目立たなくなります。
リビングは使い方を限定しない大空間としています。必要最低限のものしか持たないミニマルな生活をする夫婦は、気分に合わせてテーブルやソファーの位置、飾るものを変えながらこの空間を楽しんでいます。
※古谷野建築設計事務所と共同設計