武川建築設計事務所

山と建築

2023.10.12更新

昨日は私の所属する「NPO法人地球の会」の勉強会で埼玉秩父へ遠征してきました。

地球の会は日本の木で家を建てることを大切にする工務店が全国から集まり、運営されている組織です。その設計事務所部門で参加させていただいてます。今回参加した「山・建築連携ベンチマーク勉強会」は作り手側(建築)からだけでなく山側、そして消費者を含めた連携について深く掘り下げるとても興味深い内容で、今年3回目となるのがこの埼玉秩父ツアーでした。

この勉強会に参加したのはただただ山のことや木のことについて知識を深めたいという気持ちもあるのですが、一番の理由がおととしからのウッドショックのこと。日本は国土の7割が森林で、身の回りには建材となる杉・桧といった木材が大量に生えているのになぜ材料が不足したり高騰したりと大きな混乱が起こってしまうのかとう疑問の答えを見つけたかったからです。もちろん本やネットで得られる情報程度の回答は持ってはいたのですが、どうも腑に落ちない。仕事にも直接影響がある問題なのにきちんと理由を説明できていなくてずっと気になっていました。

初回の勉強会では兵庫県宍粟市にある「株式会社しそうの森の木」さんを見学しましたが、工場長の開口一番に話された「木は本当に儲からない」という言葉、とても印象にのこっています。勉強会や直接製材業をされている方の話を聞くにつれて、多くの問題が結局これにつながるんだなと感じています。山主の意識の低下、川上から川下の流通過程での利益分配のいびつさ、効果的に利用されない多額の助成金、予測が難しく振れ幅の大きい需要量。知れば知るほど複雑で、今のところ簡単には説明できるような問題ではないというとこまでわかってきました。

引いた目で見ると比較的経済的な競争に勝ち、その価値が高まった日本で1次産業が斜陽になるのは当然の流れとしてあるので、今後も縮小していく動きは止まらないのだと思います。ただ、勉強会で学ばせていただいた「森林パートナーズ」さんやしそうの森の木さんのような社会構造の変化に合わせて付加価値を高める枠組みを作れた地域や、古くから木材そのものの品質を他にないくらいまで高めた吉野のようなところだけが生き残っていくのでしょうか。よく使うたとえですが、スイスの時計職人の栄枯盛衰と同じ流れですね。

またたくさんの情報が入ってきてしばらくこのことが頭から離れなさそうです。山と建築について詳しい方興味のある方、ぜひお話聞かせてください。

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